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市営地下鉄等の都市交通開発について、福岡を中心に考える

交通

私が大学新卒時の就職試験で、福岡の某大手デベロッパーの最終面接を受けた際に、そこの社長さんから「都市開発に対して行政側の問題点」という趣旨の質問を受けた。

当時、第一志望の最終面接ということもあり、極度に緊張してまともな回答ができず不合格になってしまったのだが、その時の質問について考えることがよくある。

あの時、緊張していなければ、「都市交通に対する投資の非積極性」を問題視していることを話したと思う。

福岡市の話になるが、福岡市は「西日本鉄道」という大手私鉄が存在し、福岡県南部に向けた鉄道路線のほか、福岡市を中心に多数のバス路線を有する日本一のバス会社という側面を持つ。

福岡はバス大国とよく呼ばれることがあるが、市内には西鉄バスが網の目のようにバス路線を展開しており、特に鉄道空白地帯を中心に多くの利用客が存在する。

これらの路線は、当然福岡市が運営する福岡市地下鉄と競合するものも多いのだが、バスと地下鉄の利便性を比較すると、地下鉄が通る地区に投資が集中し、結果的に駅周辺の商業・公共施設が集中して住みやすく人気のある場所が形成されるものだ。

福岡市には現在「空港線」「箱崎線」「七隈線」の3路線の地下鉄路線が存在し、都心である博多・天神に直結する「空港線」を軸に都市開発が進められてきた。

何故か博多駅に直結せず、利便性が限定的であった「七隈線」も近年博多駅に延伸し、七隈線沿線の人気も爆発的に増えている。

七隈線は開業当時、想定より大幅に利用客が少なく失敗した路線であったと言えるが、福岡市の人口増や、天神の都心機能が七隈線の終点駅であった天神南地区に移動していること、九大六本松跡地の再開発などで順調に利用客を伸ばし、今では空港線に次ぐ混雑路線として生まれ変わった。七隈線の沿線各駅も小規模ではあるが商業集積が進み、居住先として人気を集めている。

これらは七隈線が開業したことで市内各地に街が形成されたと言えるが、バス路線だとそうはいかない。市内には、博多港周辺・百道浜周辺のような極度にバス路線が充実した地区が複数あるが、それら地域には面としての商業集積が殆ど進んでいない。15000人規模のアリーナ「マリンメッセ福岡」や、「福岡みずほpaypayドーム」など、大規模な集客施設が点在しているにもかかわらず、だ。

本来であれば、これらの周辺は商業施設の集積が行われても不思議でないほど人流が多く、福岡市も「ウォーターフロント地区」として都心の第三極を目指している地区でもある。

しかし、遅々として進んでいないのは、ひとえに鉄道アクセスが不便であるのが理由だろう。

福岡市営地下鉄に関わらず、日本の各都市で鉄道が新造されていた当時は、急激な人口増が見込まれていた時代であり、建設してもその建設費は運賃の黒字で賄えていた。しかし、現在ではそうはいかない。

そのような背景があり、都市交通の拡充を躊躇う自治体が殆どだが、公共交通の整備は果たして「黒字化出来ないからしない。」というのが正しいのだろうか?

近年人口増加が著しい福岡市でも、いずれ人口減少時代は訪れる。しかし、それでも世帯数は増加し続け、都心回帰の傾向は続くと予想される中、広範に広がる住宅街に対して住みよい街の形成の核となりうる公共交通の開発に躊躇しても良いのだろうか?私はそうは思わない。

人口減少が始まったとはいえ、今の日本にはまだ余力がある。福岡市は税収も伸び続けている。今後さらに高齢化が加速し、高齢者の免許返納が義務化される時代もおそらく来るだろう。その時に近くに拠点となる街がなく、公共交通が届かない地区が残っていたら、それこそ社会問題になることは間違いない。

また、外国人労働者や観光客が急増している傾向も見逃せない。外国人人口が増えるということは、純日本人とは別の関係人口が増えるということにもつながる。公共交通がバスしかない地域には人は来ない。

余力のある今のうちに、鉄道新線など公共交通に力を入れ、住み良い街の形成のために税金を投入すべきではないだろうか。

地下鉄を延伸、または新線開発する際の利用予測は、現状に対する利用予測に他ならない。七隈線の例を見ても予測は全く当たらないし、新駅が出来たらそこには新たな需要が生まれ、集積が進むのだ。

福岡市は、都市機能がコンパクトに集積していることが良く評価されるが、それが故に中心部と郊外地域の格差が大きい。一回り大きな名古屋市と比較しても、可住地の人口密度はそれほど差がないにも関わらず、市内の鉄道交通が貧弱だ。名古屋市は車中心社会であり、鉄道インフラの他に道路インフラも発達しているが、福岡市はそうではなく、郊外地域から中心地に多くの自家用車・バスが集中して社会問題と化している。

札幌の鉄道インフラと比較すると、福岡市地下鉄の開発余地が十分あることがわかる。
札幌市は面積が広大で可住地も福岡市の倍以上あるが、可住地人口密度は3分の2にも満たない。福岡市は西日本鉄道の路線が都市交通の側面も担っているため、実際には地下鉄3路線+1路線と考えることができるが、そうだとしても札幌市の規模で48kmもの地下鉄インフラが維持できていることを考えれば、福岡市地下鉄が仮にもう2路線あったとしても維持は可能だろう。

話を戻すが、都市開発に対する行政側の問題点として「公共交通に対する投資の非積極性」は、特に福岡市にとって大きな問題だと考える。公共交通に対して採算性だけで物事を図るのではなく、「都市開発」として考え、積極的に投資してもらいたいものである。

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