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福岡市営地下鉄空港線の長者原駅接続構想について考察する

交通

2022年7月12日に福岡市が「福岡市地下鉄空港線とJR福北ゆたか線の接続に関する基礎調査について」の報告書を公表しました。
今回の調査結果をもとに、長者原接続構想の紹介と今後の可能性について考察していきます。

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構想の概要について

構成自治体

今回福岡市が公表したのは、糟屋・筑豊地区の2市9町による「福岡市地下鉄福岡空港駅・JR九州長者原駅接続促進期成会」からの要望書をもとに、福岡市営地下鉄「福岡空港駅」からJR九州「長者原駅」まで接続した場合の事業費や採算性を調査した結果の報告書になります。

この要望書によると

福岡空港や博多・天神地区と周辺自治体との広域的なアクセスを向上させ、沿線自治体の活性化や交流人口増加を図ることを目的とした取組である福岡市地下鉄福岡空港駅とJR九州長者原駅接続の実現

福岡市地下鉄福岡空港駅・JR九州長者原駅接続促進期成会
「福岡市地下鉄福岡空港駅・JR九州長者原駅接続促進にかかる要望 」

が主な要望理由として記載されており、期成会の自治体は

直方市、飯塚市、宇美町、篠栗町、志免町、須恵町、久山町、粕屋町、小竹町、鞍手町および桂川町

で構成されています。

期成会構成自治体

これら構成自治体のうち、鞍手町・直方市・小竹町・飯塚市・桂川町・篠栗町・粕屋町は自治体内に福北ゆたか線の駅が存在し、宇美町・須恵町・粕屋町には長者原駅に乗り入れている香椎線の駅が存在します。久山町は町内に駅は存在しませんが、久山町の最寄駅が福北ゆたか線の篠栗駅・門松駅です。
志免町は長者原駅から福岡空港駅の間に立地し、新駅ができるとなれば志免町内になることが考えられます。

ルート概要

「福岡市地下鉄空港線とJR福北ゆたか線の接続に関する基礎調査について」より
引用:https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/168622.pdf

ルートは4パターンで想定されており、
Aルート・・・JR長者原〜福岡空港直通ルート
Bルート・・・JR長者原〜イオンモール福岡〜東平尾公園〜福岡空港ルート
Cルート・・・JR原町〜福岡空港直通ルート
Dルート・・・JR原町〜イオンモール福岡〜東平尾公園〜福岡空港ルート
となっています。

JR長者原ではなくJR原町からのルートでは直通ルートで150億円の事業費減が可能です。
しかし、直通駅までが一駅分伸びることで短縮時間も3分減となり、香椎線からの乗り換えも一回多くなるため長者原駅〜福岡空港駅への接続が望ましいと考えます。

B・Dルートは志免町中心部に新駅を作るため、福岡市内から志免町へのアクセス向上が期待できますが、大きく迂回するルートになり福北ゆたか線からの速達性が著しく落ち、事業費も倍増するため現実的ではないです。
志免町はB・Dルートを望むと考えられますが、A・Cルートで旧勝田線上亀山駅付近に途中駅を設けるのが妥協点となりそうです。

短縮効果

各都市中心駅からの所要時間と新線建設時の所要時間

福岡市内への通勤圏として大きな影響を及ぼす自治体が期成会を構成しており、期成会構成自治体の総人口は382,780人(2021/10/1現在)に上ります。
構成自治体の中で最も人口の多い飯塚市(125,505人)の中心駅「新飯塚駅」から福岡空港駅までの現在の朝ラッシュ時の所要時間は1時間2分ですが、新線建設によって40分を切ることができます。
福北ゆたか線乗り入れの際は、最も短縮効果の高いルートで23分の短縮を見込むことができ、北九州市に近い直方市から福岡空港駅までが1時間以内で到着します。

香椎線乗り換えの場合も約15分の短縮効果が期待でき、福岡空港駅への通勤圏が大きく広がることに貢献するでしょう。

また、地下鉄接続・JR乗り入れのメリットは「福岡空港駅」乗り入れのみではなく、天神駅」への直通運転に大きなメリットが存在します。
現状「福岡空港駅」から「天神駅」へは約11分で到達可能で、福北ゆたか線から乗り換えなしで直通することでJR博多駅での乗り換えの必要がなくなり、数分〜10分程度の時短効果が期待できます。

もちろん、途中駅が少なくなるため「博多駅」へ時短効果も見込めます。
現在、長者原駅から博多駅は普通列車で約14分かかりますが、空港線利用で博多駅までは約10分となり4〜5分の時間短縮に繋がるでしょう。
博多駅まで10分・天神駅まで16分となれば、長者原駅は福岡市内の姪浜駅や香椎駅などの副都心と同等かそれ以上の交通利便性を有する可能性を秘めています。

最短縮ルートで長者原〜福岡空港駅間を23分短縮

天神駅や博多駅への時短効果も期待できる

実現すれば長者原駅は「姪浜駅」「JR香椎駅」を超える交通利便性を有する可能性がある

運行本数の設定

「福岡市地下鉄空港線とJR福北ゆたか線の接続に関する基礎調査について」より
引用:https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/168622.pdf

ケース1は福北ゆたか線・地下鉄各線の運行本数を現状のまま維持しつつ、新たに直方駅から姪浜駅までの直通便を75本増加させる案で、ケース2は2路線の運行本数と新規直通便の運行本数の合計が現状の運行本数と同数にするケースです。
簡潔に図示すると下記のようになります。

両ケースの運行本数(日/本)

ケース1では、現在の福北ゆたか線・地下鉄空港線全線の利便性を落とさず地下鉄直通分を増便して対応する案です。
その場合、福北ゆたか線(長者原〜直方)・空港線ともに大幅な増便となり利便性が格段に向上します。

ケース1の各駅時刻表(予想)
篠栗駅 (長者原・博多・福岡空港方面)
黒丸が増便後の予想 ケース1の45本増便を想定

福北ゆたか線はJR九州の路線で数少ない黒字路線です。そのため元々の本数も比較的多い路線ですが、増便が重なることで篠栗駅から博多駅までのアクセスが格段に向上します。朝ラッシュ時10本以上になることは確実でしょう。

福岡空港駅(博多・姪浜方面)
ラッシュ時を多めの想定で設定しています。

福岡空港駅は長者原駅で折り返し運転する電車も含まれるため、さらに本数が増えています。予想上ではありますが、ラッシュ時1時間24本近く運行されることになると考えられます。
日中の本数も時間に10本を超え、全体的に地下鉄空港線の利便性は向上すると予想されます。

天神駅(西新・姪浜方面)

福岡市営地下鉄空港線は、福岡空港と福岡市中心部の博多・天神・中洲、副都心である西新・姪浜などを結ぶ福岡市の最重要路線なので元々の本数は比較的多いですが、福北ゆたか線の乗り入れにより朝ラッシュ時の運行本数が26本となります。

大阪メトロ御堂筋線梅田駅 27本
東京メトロ銀座線銀座駅 29本
名古屋市営地下鉄名古屋駅 29本

に並ぶ日本有数の運行本数を誇る地下鉄になる可能性があります。

収支採算性

右からA, B, C, Dルートの収支採算性 収支採算性は開業後40年間、新線区間のみを想定して算出されています。
引用:https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/168622.pdf

収支採算性に幅があるのは、新線区間の運賃に200円〜400円と幅を持たせている為です。
利用者予測は1日上限14,000人が往復する想定です。
2019年の福北ゆたか線鞍手駅からの乗車人員は公開されていない駅を除くと乗車人員25,454人、香椎線の長者原駅を除く宇美駅〜土井駅までの乗車人員は7,044人なので、合計約32,000人の乗車人員が存在します。
これら乗客の一部が新線区間に流入し、地下鉄利用者の一部も流入すると考えると妥当な数字だと考えます。

福岡空港駅利用者のみならず、中洲や天神の利用者もこの直通路線を利用するため、飯塚-天神間の高速バス利用者からの流入も見込めます。
筑豊・糟屋地区への利用促進によっては現状以上の鉄道利用客を創出する可能性も大いにあるでしょう。

総括

福岡空港へのアクセスに大回りし乗り換えが必要な筑豊地区の空港アクセス利便性を高めることが、この構想の主目的ではありますが、中洲・天神へ乗り換え無しで鉄道移動が可能になるメリットは大きいです。
旧勝田線が存在した鉄道空白地帯である志免町に鉄道路線が出来るというメリットを追い求めれば、東平尾公園・イオンモール福岡に新駅を作るB・D案も検討されるべきですが、人口が綺麗に分散した約40万人の都市群を結ぶ路線の速達性を犠牲にして志免町に駅を作るべきかは疑念が残ります。
採算性からも、より安価に建設できるA案が妥当ではないでしょうか。

また、今回は福岡市営地下鉄の延伸としてではなく、空港〜長者原間を新線と想定して調査が進められているようですが、もし第三セクターのような形で会社が設立されたら阪神神戸高速線のように会社を跨ぐことで運賃がリセットされるなど利用者に負担がいく可能性もあります。
福岡市外の路線にはなりますが、福岡市営地下鉄の延伸、もしくはJRの新線としての開発が望まれます。

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