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IR(統合型リゾート)のメリットとデメリットをもう一度考えてみる・前編

IR

ここ数日で、現在(2022/3/22)情報が出ている日本版IRの候補地について、紹介と考察を行ってきました。
恐らく計画提出期限の4月28日以降、IRの議論が再び活発になると予想されます。

なぜ今、島国日本でIR(統合型リゾート)の誘致の議論がなされているか、再度考えてみます。

IR推進の経緯

初めに、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律に定められている、IR推進の目的と基本理念を見てみましょう。


(目的)第一条 この法律は、特定複合観光施設区域の整備の推進が、観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資するものであることに鑑み、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、特定複合観光施設区域整備推進本部を設置することにより、これを総合的かつ集中的に行うことを目的とする。

(基本理念)第三条 特定複合観光施設区域の整備の推進は、地域の創意工夫及び民間の活力を生かした国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現し、地域経済の振興に寄与するとともに、適切な国の監視及び管理の下で運営される健全なカジノ施設の収益が社会に還元されることを基本として行われるものとする。


法律で定められている理念や目的を読むと

  • 国際競争力のある観光地の創造
  • 地域経済の振興
  • 日本の財政の改善

が主な目的と考えられます。

この法律が成立した2016年の日本の状況を見てみると、日本版IRの設置を推し進めた意図が見えてきます。

日本政府観光局  訪日外客数・出国日本人数データより作成

2016年といえば、日本では外国人観光客がこれまでに類を見ないペースで増加していた年であり、中国人観光客による「爆買い」も社会現象となっていました。
日本は立地的に欧米諸国から遠く離れていますが、現在最も人口増加が著しい東アジア諸国と隣接しています。恐らく今後数十年でインドネシアを始め多くの東アジアの国々の経済が成長し、世界でもトップクラスのマーケットとなることが予想されます。

しかし、日本の状況は芳しくありません。

日本の高齢化率はダントツのトップであり、出生率も低いため、2008年の人口統計から今まで人口減少が続いており、その減少幅も加速しているのが実態です。

総務省統計局:https://www.stat.go.jp/info/today/009.htmlより抜粋

高齢化が進み、人口が減り、購買力が失われていく日本で財政の改善を行うにはどうすればいいか。
そうです。海外からのお客様に日本でたくさんお金を落として貰えばいいのです。

幸いにも多彩な食文化に、四季折々の美しい風景、世界最長とも言われる国家の歴史など、この島国には多様な観光資源が存在します。

コロナウイルス感染症により海外渡航が難しくなっていますが、感染症が落ち着けばまた海外観光需要が戻ることが予想されます。
その時、いかに外国人観光客に魅力的な観光地を作るか、いかにお金を落としてくれる施設を作るかが、観光による財政改善の鍵になると考えたのでしょう。

世界各国で統合型カジノリゾートが開発されており、日本はそのラストフロンティアと言われています。
世界で最も厳しい基準でカジノが合法化される予定の日本では、海外企業の参入はかなりハードルが高いですが、その市場性も無視できない規模です。

また、海外観光客だけでなく、多くの貯蓄を溜め込んだ日本の富裕層や高齢者にお金を使ってもらうことも、経済を回す上で大変重要です。
カジノというと日本のパチンコや競馬と同じようなギャンブルを思い浮かべがちですが、ドレスコードや高額な入場料、1週間や月あたりの入場制限など、庶民が頻繁に出入りできるような施設ではありません
富裕層にお金を使っていただき、数万人といわれる従業員に還元する経済のサイクルが生まれることが期待できます。

このような狙いがあり、日本版IRの推進が決定されたと考えられます。

IRを推進する上でのメリット

まずは、IRを推進するメリットを挙げていきます。

  • 国・地方財政の改善
  • 雇用の創出
  • 国際的な知名度の獲得

国・地方財政の改善

日本人からは、ギャンブル依存症防止の観点から入場料6,000円が取られ、運営者はカジノ行為粗利益の30%を納付する必要があり、この2点が国・自治体の主な収入となります。

福岡・長崎・和歌山の入場料・納付金(地方自治体分)は約300億円前後、IR大阪は1100億円で試算されています。
例えば、2019年度の福岡市の税収は3444億5400万円ですが、IR福岡の福岡市収入分は、税収の約1割にのぼります。
これは令和4年の市債発行額の約半分であり、法人市民税とほぼ同額です。

このように、IRによる地方の増収効果は凄まじいもので、IRから得た利益を社会福祉費や子育て支援などの政策に回すことができます。


雇用の創出

IR予定地にはカジノだけでなく、高級ホテル・プールなどのレジャー施設・MICE施設など多くのサービス業がオープンします。もちろん、IR予定地ではその分雇用が生まれ、住民が増え、消費や納税も盛んになるでしょう。
これら施設は国内で見ても大規模なものが開発されることが予想され、外国語話者など高度人材の雇用にもつながります。

大阪IR基本構想より抜粋

首都圏以外の地方都市は、就職を機に関東に人口の流出が激しく、地元に職がないというのが東京一極集中・地方衰退の大きな原因となっています。
数万人規模の雇用創出は、人口流出の抑制につながり、人口の増加に寄与すると考えられます。


国際的な知名度の獲得

カジノがある都市は外国人の旅行先候補として上がるだけではなく、大規模なMICE施設や高級ホテルを併設し、国際会議の候補地にもなり得るため、都市の国際的な知名度を獲得する可能性があります。(IRが成功することが大前提ですが)

大阪市は世界的に見てもかなり大規模な都市圏ですが、東京や京都と比べると国際的知名度は低いです。しかし、IRが成功することでマカオやラスベガスのような観光都市としての知名度を得ることができますこれは福岡や長崎、和歌山も同様です。

知名度が高い都市には国際的な企業の誘致のしやすさにも繋がります。国際金融都市を目指す大阪・福岡にとってIRはかなりの相乗効果を生み出すでしょう。


ここで挙げたメリットは3つともこれ以上ない程大きな影響を都市にもたらします。
特に税収の一割を超える規模の収入をIRで得られるということは、わかりやすく市民の生活に関わってくるでしょう。

しかし、後に話しますが、やはりカジノはギャンブルの一種であり、市民に不安を与える政策であることは間違いありません。
そのため、地方自治体や運営者はしっかりと住民に対策やメリット・デメリットの説明を行い、IRで得た収入をどのように市民に還元するのかを明確にする必要があると思っています。

記事が長くなりましたので、デメリットの考察は次回にさせていただきます。
よろしくお願いします。

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