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【広島県内】2025年・2035年・2045年の市町村別将来推計人口を分析する

将来人口推計

国立社会保障・人口問題研究所が発表している将来推計人口のデータをもとに、広島県の人口推移を分析します。

国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』より作成

上の図は、都道府県別の将来推計人口増減率です。
全国的に激しい現象が発生するなか、広島県は比較的人口減少が少ない都道府県の一つです。
(前回までに取り扱った福岡県秋田県はこちらから)

地方中枢都市の一つである広島市を有する広島県内の市町村別傾向を見ていきます。

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2025年

国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』より作成

2025年は広島市の人口増加が継続し、広島市以外の自治体は人口減少が見られます。
実際はコロナウイルスの影響で2021年度は各地の大都市で予想外の人口減少が発生しており、広島市でも少々の人口減少が見られていますが、傾向としては予測とそこまで大きくは変わりないです。

特に広島市中心部である中区の人口増が目立ち、都心回帰の傾向が見られています。
南区に位置する広島駅周辺の大規模開発も、南区人口の増加を進めると考えられます。

広島市外に目を移すと、広島の2大都市である福山市は広島市から離れているものの人口規模を維持しており、一定の中枢性を持ち合わせていることがわかります。
宮島を有する廿日市市や広島大学が立地する東広島市など、広島都市圏に属する都市も微減・微増で推移しており、広島県郊外と比較して人口を維持しています。

元々人口規模の小さい県北部や島嶼部は県内でも人口減少が激しく、15%〜25%の減少も見られています。

国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』より作成

広島市も他の都道府県の例に漏れず、もともと人口が多い自治体では減少率も低く推移していますが、呉市については1割以上人口が減少しています。

呉市はもともと海軍の軍港都市として栄えており、戦後も造船業や鉄鋼業を中心とした工業都市として、1970年代に人口31万人とピークを迎えました。
しかし、東南アジアや東アジア諸国の工業の発展や、日本国内での第二次産業の地位の低下により、1980年代以降継続して人口が減少し、現在に至っています。
この人口減少は現在以降も継続すると予測され、2025年には約12%の減少で推移します。
工業都市として高度成長期に発展した都市は全国的に衰退傾向にあり、前回取り扱った福岡県北九州市も同様の傾向を示しています。

広島市やその周辺自治体は高齢化率が25〜30%程度と比較的低く、郊外部や島嶼部は4割を超える自治体もかなり見られる点も特徴的です。

2035年

国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』より作成

2035年の図を見ると、都市部と郊外部での差がかなり激しくなっていることが見て取れます。
広島市も中心部の中区や西区・アストラムラインが通る安佐南区は人口を維持しているものの、その他地区では人口減少が進み、広島市全体では人口減に転じています。

特にアストラムラインが通り中心部への交通利便性が高く、開発が盛んな安佐南区は市内でも大きく人口が増加していることは特徴的でしょう。

広島市や廿日市市・東広島市などの広島都市圏と、中枢的地位にある福山市は引き続き人口減が少ないものの、広島市に隣接する北広島町や海上で隣接する江田島市など、広島市に比較的近い自治体でも4割以上の人口減が発生しており、厳しい状態が続いています。

国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』より作成

広島市の一部の区で人口を保っているものの、広島市全体で見ると減少局面に入っており、2035年では県内で2015年時から人口増加している自治体は存在しなくなります。

呉市・尾道市・安佐北区など人口が比較的多い自治体でも激しく減少している地域が見られ、高齢化率も10年で1.6%上昇しています。
県内では高齢化率が低かった広島市は3%近く高齢化が進行しており、都市部は急激に高齢者人口が増加することが予測されています。

2045年

国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』より作成

2045年でも広島市の一部地域では人口を維持していることがわかります。
広島市中区や安佐南区では人口が減少に転じているものの、2015年比では増加しており、広島市中心部の影響力の高さがわかります。

広島都市圏や福山市など、人口減少が緩やかだった都市は、2045年時点で人口1割弱の減少で耐えているため、この時期まで広島県の都市部では人口が減少した実感はあまり湧かないかもしれません。

しかし、都市部から離れた郊外地域や山間部・島嶼部では激しく人口が減少しており、既存のインフラを維持できる保証はどこにもありません。先日JR西日本が公開した「赤字ローカル線一覧」では、広島市と庄原市・三次市など郊外部をつなぐ芸備線は、広島近郊の通勤圏でも輸送密度2000以下とかなり赤字を出していることが考えられ、郊外部に至っては営業係数25000以上という脅威的な赤字路線も含んでいます。さらに人口減少が進むことが予測されている現状、このような交通インフラは壊滅的となるでしょう。

国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』より作成

中区と安佐南区が人口を保っており、アストラムライン沿線の開発が進む安佐南区では唯一高齢化率が3割を切っています。広島市内では安佐南区よりさらに北に位置する安佐北区の人口減少率が約3割に達しており、広島市の減少率を押し上げています。

広島大学の立地する東広島市やマツダの本社所在地である府中町など、現在好調な町として語られることが多い2市町もこの時期になると人口減少が顕在化してきます。

人口減少が続いてきた呉市は、この時期になると最盛期の半分となり、様々な都市問題が発生することが考えられます。
広島県では瀬戸内海沿いの自治体に規模が大きい市町村が集まっていますが、竹原市や尾道市・呉市など、3割を超える人口減により高齢化率も4割となり苦しい状況となるでしょう。

【広島県内】人口減少数ランキング

  1. 呉市 -78687人 34.4%減
  2. 広島市 -71922人 6.0%減
  3. 尾道市 -43121人 31.1%減
  4. 福山市 -35226人 7.6%減
  5. 三原市 -29554人 30.7%減

総括

2045年には広島県の約半数の自治体が減少率4割を超え、県内の高齢化率も35%を超えますが、これでも全国的にはマシな部類です。日本でも最も高齢化や人口減少が深刻な秋田県と比較すると、わかりやすいと思います。

2015年〜2045年で最も人口減少数が多い自治体は、約120万人の人口を有する広島市ではなく約22万人の呉市であるなど、地域によってはかなり深刻な自治体も存在します。

JR西日本の赤字ローカル線を始め、様々な郊外の公共インフラ維持などが今現在でも大きな課題となっている広島県ですが、さらに悪化していく県内の状況を見据え、地域経済・サービスの維持のためにさらに議論を進め、対策を練る必要が迫られています。

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