日本には、様々な高層ビルが立ち並ぶ大都市が多くあります。
日本の首都「東京」では、現在日本最高層ビルの大阪市にある【あべのハルカス】を超える高さ330メートルのオフィスビル開発「虎ノ門・麻布台プロジェクト」が進行しています。すでに最上階に到達しており、現時点であべのハルカスを超えて日本一の高さとなっています。
さらに「東京駅前常盤橋プロジェクト」(約390m)が計画されており、最高層がまた更新される見通しです。
東京だけでなく地方都市でも、大阪市の「夢洲駅タワービル」や名古屋市栄駅そばの再開発プロジェクト(約211m)、札幌市の「JRタワー側」(約245m)や「JR駅前」(約200m)など200mを超える超高層ビルが多数計画されています。
そのような中、福岡市の再開発計画では天神地区の「福岡大名ガーデンシティ」(111m)が最高層の高層ビルとなっています。
なぜ福岡市に高層ビルができないのか。
それは、都心部にかかる高さ制限が大きな要因となっています。
高さ制限による影響は福岡市だけではなく、景観条例で一律規制されている京都市や、大阪伊丹空港の影響を受ける大阪市、羽田空港の影響を受ける川崎・東京など全国で見られます。
そこで今回は、大都市に近い3空港「羽田空港」「大阪伊丹空港」「福岡空港」の3空港における高さ制限を比較したいと思います。
羽田空港の高さ制限
羽田空港周辺
羽田空港の高さ制限を見ると、川崎市の川崎区沿岸で51〜150mの厳しい高さ制限がかかっている他、大田区や品川区でも150m以下の高さ制限に広範囲で入っています。
特に大田区は100以下の制限区域が広く、大田区中心部の大森駅や蒲田駅周辺には100mを超える超高層ビルは建っていません。
川崎市周辺
川崎市周辺を見てみます。
川崎市では川崎駅周辺で100m〜150mの高さ制限となっており、川崎駅前のJR川崎タワーも最高部135mの高層ビルに止まっています。
武蔵小杉のある川崎市中原区は、高さ制限の対象外地域であり、「パークシティ武蔵小杉 ミッドスカイタワー」は最高部が約203mとなっています。
品川区周辺
次に、品川区方面を見ると、品川駅そばまで約150mの高さ制限があり、港区や中央区にも200m制限区域がかかっています。
しかし、150m以上もあればかなりの高層ビルなので、これらの区域で超高層ビルが少ないという印象はあまり受けません。
また、今回は200mまでしか制限範囲を載せていませんが、新宿区や渋谷区、今回開発が進んでいる虎ノ門でも200〜300mの高さ制限があります。
しかし、今回330mのビルが虎ノ門に建設可能になったのは、東京タワーを根拠とした特例承認によるものです。特例承認とはいえ100m以上の制限緩和は異例であり、かなり疑惑の残る案件だと個人的には思っています。
福岡市でも同様に都心部のKBC電波塔(約160m)を根拠とした制限緩和を期待したかったですが、現状NTT電波塔(115m)を根拠とした制限緩和しかされないようです。
大阪伊丹空港の高さ制限
大阪伊丹空港周辺
大阪伊丹空港は、大阪市から北側に位置する伊丹市に立地します。
伊丹空港を中心に高さ制限が広がっており、伊丹市全域や尼崎市、宝塚市、豊中市、西宮市、池田市、大阪市の一部で高さ制限があります。
伊丹市や尼崎市の阪急塚口・園田駅、JR宝塚線の塚口駅〜中山寺駅あたりは高層ビルがあまり存在しない地域になっており、高さ制限の影響を受けていると考えられます。
阪急西宮北口駅や宝塚駅、梅田駅など高さ制限の緩い範囲となると、高層ビルが多数建設されています。
尼崎・大阪梅田・新大阪周辺
大阪市方面を見ると、新幹線駅の「新大阪駅」周辺や尼崎市中心部などで〜150mの制限区域が広く設定されており、強い影響を受けています。
特にJR西日本有数の利用者数を誇る新大阪駅には梅田のような超高層ビルを建てることができず、100mほどのビルが林立しています。
また、大阪市の中心部である「梅田駅」周辺から中之島、難波、新今宮にかけても150〜300mの高さ制限がなされており、「あべのハルカス」が立地する天王寺周辺で約300mの制限があります。
福岡空港
福岡市周辺
福岡空港は日本の大都市の中で最も中心部と近い空港として有名です。
博多駅から地下鉄で5分の距離にある同空港は、福岡市への高さ制限の影響が強く出ています。
中心円の54m規制区域は、博多駅を含んだ福岡市博多区・志免町のほぼ全域に加え、東区・中央区・南区・粕屋町・大野城市の一部が範囲に入っており、特に福岡市の中心市街地である博多区や中央区、東区、南区では高需要地区にも関わらず高層ビルが建設できません。
また、中心部から外れた早良区や東区北部、春日市や大野城市でも54m〜200mの高さ制限がかかっており、この中でも比較的高さ制限が緩い福岡市郊外の副都心に高層ビルが集中しています。
中心部(博多・天神周辺)
福岡市の玄関口「博多駅」とその周辺は54m、繁華街である「天神」周辺は54m〜80mに高さが制限されています。
現在行われている再開発プロジェクト「博多コネクティッド」と「天神ビッグバン」では双方で高さ制限が緩和されていますが、博多周辺地区で約60m、天神地区で76m〜115mと虎ノ門周辺の約100m緩和と比較すると微々たるものです。
東京・大阪を除くと、日本で都市の中心部以外の地域で超高層ビルを建築できる程力を持った都市は皆無であり、都心部に高層ビルが建築できない福岡市に名古屋や札幌、仙台のような150m超の超高層建築物がないのはこの高さ制限が最大の原因と言えます。
西部副都心(西新・百道浜周辺)
中心部に高層ビルが建設できない福岡市も、都心から離れた副都心地域では100mを超える高層ビルが複数存在します。
西部副都心である西新・百道浜には約150m(福岡タワー周辺は景観法により約100mの高さ制限)と、都心部と比較して制限が緩い他、地下鉄空港線で都心と直結する利便性の高い地区であり、90〜140m級の高層ビルやマンションが複数立地しています。
東部副都心(香椎・千早・アイランドシティ周辺)
西新や百道浜と並び、東部副都心である香椎周辺でも高層建築物が複数立地しています。
千早地区では115〜130mに高さが制限されており、約110m規模の高層建築物が複数建てられています。
また、アイランドシティ周辺は150m〜170m程の制限区域であるため、150〜160m級の高層マンションが複数棟存在し、現在でも新しい高層マンションが建築中です。
しかし、百道浜と違い地下鉄主要路線に接続されておらず、業務ビルは千早にあるNTTドコモ九州香椎ビルが唯一の業務ビルです。
終わりに
空港が近いということは、都市において高い利便性とつながる大きなアドバンテージになりますが、同時に高さ制限の影響を大きく受け、成長の機会を阻害する要因にもなります。
福岡市の暮らしやすさの大きな要因として空港の近さが挙げられますが、羽田空港や大阪伊丹空港も十分近く利便性も高いです。アクセス鉄道を整備した上で【大阪駅ー伊丹空港】間程の距離感が最も適した距離なのではないかと個人的には考えています。
高さ制限は空港だけではなく百道浜のような景観法による高さ制限も存在し、京都市では広範囲で31m以下の高さ制限が設けられています。
福岡以上に厳しいですね。
参考資料
以下のシステムから得た高さ制限情報を参考に地図を作成しています。
福岡空港高さ制限回答システム https://secure.kix-ap.ne.jp/fukuoka-airport/
大阪国際(伊丹)空港高さ制限回答システム http://www.kansai-airports.co.jp/itm_seigen/
羽田空港高さ制限回答システム https://secure.kix-ap.ne.jp/haneda-airport/
京の景観ガイドライン https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/cmsfiles/contents/0000281/281294/guideline_takasa.pdf
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