近年急激に増加している外国人観光客。2019年度の訪日外国人は3188万人にも上り、コロナでいったん落ち着いたものの、2023年度には2019年度の8割近い2506万人まで回復しました。
2019年度は1000万人に迫る勢いだった中国からの訪日客は、2023年度で約242万人と大きく数を減らしていますが、韓国(558万人→695万人)や北米(218万人→258万人)など増加している国もあり、今年も多くの外国人観光客が日本に訪れることが予想されます。
西のゴールデンルート確立へ
訪日外国人観光客の多くは「東京~静岡(富士山)~名古屋~京都~大阪」を周遊するゴールデンルートを巡り帰国する。首都・東京や富士山、京都など外国人に人気の観光スポットを効率的に巡ることができるため、ゴールデンルートと呼ばれています。
このゴールデンルートは「成田(羽田)国際空港」と「関西国際空港」の2つの玄関口を点で結び、それぞれを始点、終点として観光地を周遊できることが非常に重要です。
訪日外国人の増加によりリピーターの訪日客も近年増加しています。欧米等遠方からの訪日客で約1~3割、東アジアからは7~9割のリピート率となっており、ゴールデンルートとは違う観光地を回る方も多くなっていくでしょう。
このような状況の中、福岡市長の高島宗一郎氏は、「九州~関西」を軸とした「西のゴールデンルート」を提唱しました。
4/26時点の参加自治体は、山陽地区に位置する「神戸」「姫路」「岡山県」「広島県」「下関市」に加え、周辺の「高松市」「鳥取市」、また九州地方の主要都市や温泉街を有する観光地である「武雄市」「由布市」「別府市」の16自治体です。
大阪万博と西のゴールデンルート
西のゴールデンルートを今のタイミングでの提唱は、2025.04.13から2025.10.13の半年間にわたり開催される「大阪・関西万博」が開催されることが背景にあります。
以下は福岡市長「高島宗一郎 オフィシャルブログ」から抜粋です。
【西のゴールデンルート創設へ】東京五輪がコロナで不完全燃焼に終わっただけに、2025大阪・関西万博は日本が世界に向かって発信できるまたとないチャンスだと言われます。
では、一体何を発信するのか。
日本はどんな未来を創造したいのか。どんなアクションを起こしていきたいのか。そこが肝だと思うし、そう考えた時、1年半後に万博が始まるのではなく、万博を通して日本が何を発信するのか、日本と世界の未来をどうしたいのか、そして万博後に日本に何が残るのかを考える「この1年半の思考の過程」自体が、実はパビリオンに行って刺激を受けること以上に日本にとって大切なのだと思います。
高島宗一郎 オフィシャルブログ
京都を有する関西地方は、もとより外国人観光客が多く集まる地域ですが、万博が開催される半年間は観光関連の話題の中心としてブーストが期待できます。
西日本の中心地である関西・大阪に目を向けられるこの期間に、普段ゴールデンルートの陰に隠れる西日本を世界に発信できる機会を活用し、急激に盛り上がっているインバウンドの恩恵を西日本まで広げていくことが一つの大きな目的です。
西日本の観光資源
日本に住んでいる方はご存知の通り、東京・京都・富士山などの世界的に有名な観光地の他にも数多くの観光地が全国的に存在します。アジアからの観光客は、欧米からの旅行客と比較して「観光・レジャー目的」のリピート率(訪日2回目以上の観光客の割合)が圧倒的に高く、ゴールデンルート以外の地方にも多くの観光客が訪れています。
しかし、アジア地域に偏ったインバウンド集客を行なっている地域はカントリーリスクも大きく、特に中国・韓国は政治によって観光客数が変動してしまうリスクを抱えてしまいます。
また、欧米やオーストラリアからの観光客は平均宿泊数が長く、広い範囲を移動して観光できる潜在需要を持っているため、一度の観光で地方まで足を伸ばしてもらえるよう西日本の観光地を周知し、さまざまな国籍の方が地方まで観光に来ていただくことが重視されます。
では、東京(成田・羽田)を経由するルートに外国人観光客に人気の観光地が極端に集積しているのか?
そんなことはありませんね。歴史的な観点から海外的な知名度の高い「広島」「長崎」や、日本最大の温泉源泉数、湧出量を誇る「別府温泉」をはじめとする数多くの温泉地、NYタイムズの「2024年に行くべき52箇所」に唯一選定された「山口市」など、西日本にもインバウンド需要が期待される数多くの観光地が立地します。
また、先に述べた「海外と日本を繋ぐ玄関口と出口」という機能は西のゴールデンルートにも当てはめることができます。
ゴールデンルートの玄関口の一つである「関西国際空港」と西のゴールデンルートの玄関口となり得る「福岡空港」は、国際線利用客数3位、4位(2023)であり、2空港の国際線利用者数を合わせるとトップの成田国際空港に匹敵する規模となります。2019年度の主要空港直行便数を見てもわかる通り、関西国際空港は世界各国から直行便が運行され、福岡空港もアジアを中心に充実した運行便数がある空港です。
福岡空港第二滑走路が2025年3月に共用化予定で、積極的な新規就航を目指している空港でもあり、西のゴールデンルート確立に重要な影響を与えることでしょう。
九州周遊ルート
西のゴールデンルートの確立とは一つ別個で検討の余地があるのが「九州周遊ルート」です。
西のゴールデンルートは、空港の立地上どうしても「京都・大阪」〜「博多」までのルート線的なルートがメインとなることが考えられます。
京都・大阪で関西周遊ルートと同様であると考えることも可能そうですが、私鉄特急で時間距離・費用距離が近い京都・大阪と、博多↔︎「別府・熊本・長崎・鹿児島」ではかなりハードルが違います。
そこで、西のゴールデンルートのオプションとして九州周遊ルートが選択肢になるような施策が必要であると考えています。
「関西→広島→福岡」を訪れつつ、同じような日程感で九州各地を回ってもらい、福岡空港から出国(逆も然り)のようにする。またはゴールデンルートを体験済みのリピート客に向けて、九州周遊ルートを目的に来日してもらえるようなパッケージ化が必要です。
インバウンドが活況な日本観光の元気を地方にも波及し、地域活性やオーバーツーリズム問題解消に向けて「西のゴールデンルート」の確立を後押ししていただきたいですね。
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