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東京一極集中と都市の影響圏について

人口移動

東京一極集中と地方

日本には、47都道府県が存在しますが、中でも東京の影響力は凄まじいです。
明治後期や大正にはすでに東京一極集中の傾向があり、近年はさらにその傾向は強くなってきています。
東京一極集中が進むということは、すなわち地方都市から首都圏へ人口が集まっているということです。

しかし完全に一極集中かと言われると、実際には大阪や名古屋、福岡のような大都市にも人が集まる傾向はあります。それなら何故東京一極集中!というのが取り沙汰されるかというと、東京以外の大都市に集中する人口を更に東京が吸い取っているからですね。

2018年の都道府県間移動人口数をもとに作成 濃い矢印は特に人口移動数が多い地域を表す


東京以外の大都市に近い地域でもその大都市に人口が集まりますが、有力都市が少ない東北地方は特に関東に近い影響を強く受けています。
一度所属する地方の大都市に転出した人口も、多くは更に東京に吸われてしまいます。
やはり東京は圧倒的であり、東京一極集中はなかなか止まる気配を知りません。

都市の影響圏

ですが、東京に人口が吸われるといえど地方の大都市にも人口は集中します。
下の図では、2018年に転出先1位となった都道府県を表しています。

転出先トップの都道府県を示す

北海道・宮城・名古屋・広島・福岡を見ると、周辺から人口を吸い上げていますが、その中心県は東京に最も人口が流出しています。
東京は日本全ての範囲に強力に影響する力を有していると言えます。

それでも、関西と四国東部は関東、九州・山口は福岡、その他東海や中国、東北地方でも地方中枢都市がその影響力を地域に及ぼしています。地方の大都市に一定程度人口が集中し、東京圏へ流出する人口のダムとなっていると考えられます。

ここから、東京以外の地方都市の中枢性を見ていきます。

大阪・兵庫

各都道府県の人口流出先(2018) ※赤文字は各都道府県の流出先トップ5の場合
  1. 大阪府の人口流出先トップは「兵庫」
  2. 関西圏は東京と比較しても大阪に向かう人が多い
  3. 関西圏内でも、「京都」「大阪」「兵庫」への流出が目立つ
  4. 愛知からも一定の影響を受けている

全ての地方都市が東京に屈しているかと言えばそうでは無いようです。
日本第二の都市「大阪」は関西全域や四国・中国地方の一部から最も人口流入が起きている、広範囲に影響を及ぼす都市ですが、その大阪の最大の人口流出先は「兵庫」です。
阪神と言われるように、大阪の都市部と尼崎・西宮・芦屋〜神戸までの市街地は途切れなく繋がっており、阪神間で大きく影響し合っていることが伺えます。
これは、大阪ー京都間でも似たようなことが言えます。

関西各県は、東京への流出と比較しても圧倒的に大阪への流出が多く、大阪の関西への影響力が強力であると見て取れます。また、大阪や東京だけではなく、愛知からもある程度の影響を受けていることがわかります。

福岡

各都道府県の人口流出先(2018) ※赤文字は各都道府県の流出先トップ5の場合
  1. 九州圏の福岡への流出は、東京への流出と比較して圧倒的
  2. 九州外の山口・沖縄(流出先2位)にも大きな影響力を持つ
  3. 大阪にもある程度の影響を受けている
  4. 九州県内では、他に熊本県が有力

福岡は、日本でも最も東京から遠い大都市の一つであり、九州という一つの島の最大都市でもあることから、島内への影響力は絶大です。
また、大阪ともある程度の距離があるため、影響を受けているものの東京や福岡と比較しても小規模なものになります。

福岡県北部には戦前からの大都市・北九州市が存在するため山口県西部への影響力も強く、近年では福岡市を含め中国地方の盟主・広島より強力な影響を与える傾向があります。

九州圏内では他に、古くからの九州の中心地出会った「熊本」が存在感を持っており、九州全県からある程度の人口流入があります。「九州農政局」「九州総合通信局」などの行政機関が今でも熊本に存在するなど、当時の名残が見られます。

愛知

各都道府県の人口流出先(2018) ※赤文字は各都道府県の流出先トップ5の場合
  1. 東海3県に対して強い影響力を持つ
  2. 関西圏や中部圏に対してもある程度の影響力を持つ
  3. 愛知に圧倒的な人口流入がある都道府県は少ないが、日本全国から一定数の人口流入が存在する

愛知県は東海地方/中部地方に属し、特に東海地方に強い影響力を持っています。
中部地方に属する北陸や長野からも一定数の人口流入がありますが、関西や九州と比べて一体感は少ないです。北陸地方とは日本アルプスで隔てられており、その分文化圏が異なる影響があると考えられます。

関西圏からも人口流入がありますが、近畿日本鉄道の路線が大阪ー名古屋間で繋がっており、時間距離的に近いことも起因しているでしょう。

また、北海道や東北・北関東など、地理的に離れた地域からの人口流入も比較的多く、日本全国に少なからず影響力を持っている県というのが特徴です。トヨタを始め日本を代表する重工業が盛んな愛知県ならではの特徴と言えます。

宮城・北海道

各都道府県の人口流出先(2018) ※赤文字は各都道府県の流出先トップ5の場合
  1. 東北地方、特に隣接する岩手・山形に大きな影響力を持つ
  2. 東北地方の中では都市規模的に圧倒的な存在である
  3. 東京との距離が近く、首都圏に大きく影響されている
  4. 北海道は東北からの人口流入は小規模で、北海道内部への影響力に留まっている

宮城県は東北唯一の100万都市で、東北二番目のいわき市(約33万人)を寄せ付けない圧倒的な存在です。そのため東北各地から宮城への人口流出があり、東北地方で強い存在感を示す都道府県です。

岩手と山形は特に宮城県への人口流出が多いです。
岩手県は盛岡のほか、北上市・一関市・奥州市など10万人規模の都市が仙台へのアクセスルート上に存在し、仙台が身近な人口が多いことが人口流出の理由に挙げられるでしょう。
また山形は、県庁所在地である山形市が宮城県に接しており、仙台山形間で日本有数の規模の高速バスが運行されており、仙台への親近感が強いものと考えられます。

しかし東京を見ると、それ以上の影響力を東北地方に与えており、東京への地理的な近さを物語っています。
東北地方は他の地方と比較しても面積が広いことから、各都道府県間の距離が遠いことも、仙台の影響力が低いことに起因していると考えられます。

また、北海道は青森県以外の都市から人口を集めきれておらず、北海道内部への影響範囲に留まっています。

広島

各都道府県の人口流出先(2018) ※赤文字は各都道府県の流出先トップ5の場合
  1. 隣接する島根・岡山・山口の他、海を挟んだ愛媛に強い影響力を持つ
  2. 鳥取や香川など、中四国の影響範囲を岡山と食い合っている
  3. 西に福岡、東に大阪という大都市に挟まれ、中四国の都道府県が向く方向が広島だけではない
  4. 特に大阪が、東京都ほぼ同程度の影響力を中四国地方に有している

広島は中国地方の最大都市・広島市を有する約280万人規模の都道府県で、人口は中四国で唯一200万人を超えます。
中国地方の真ん中に存在するため、各方面に影響力を有しており、特に島根・山口・岡山・愛媛に強い影響力を持っています。

しかし、岡山県に四国の中枢都市・香川と繋がる瀬戸大橋が存在し、岡山県にも政令指定都市である岡山市が存在するため、四国や山陰への影響力が分散していることが見て取れます。

また、山口は福岡の影響下にあり、中四国自体が大阪・東京の影響下にあるため、相対的に広島の影響力は低くならざるを得ない状況です。東名阪や札仙広福と比較しても最も厳しい立地にある中枢都市と言えるでしょう。

終わりに

東名阪・札仙広福というその地方を代表する都市を表す言葉があるとおり、この7都市は人口移動の観点で見ると所属地方に大きな影響力を有していることがわかります。

しかし、東京の影響力は凄まじく、地方の活力を吸収する存在です。
東京へ流出する人口が、地方に回帰するのなら問題ないのですが、一番の問題点は東京の出生率の低さにあると見ています。

東京へ流出する人々の多くは18~24歳、また労働適正年齢であるため、出産適齢期には出生率が比較的高い地方都市を離れることになります。
東京の出生率が高ければ、正直東京一極集中しても地方回帰すれば大きな問題はないと考えていますが、東京の合計特殊出生率は1.13(2021)とダントツで低い数値です。

また、中枢7都市でも
東京1.13
宮城1.21
北海道1.21
大阪1.3
愛知1.43
福岡1.43
広島1.48

と、大阪以下4都市は平均割しています。
東京一極集中を是正するとともに、全国的に子育て支援や家族支援策を積極的に講じ、出生率を回復させる政策を取ることが、今後の日本のためには必須です。

フランスは1994年に1.66であった出生率を支援策を積極的に実施し、一時期は1.98まで、2020年でも1.84と高い状態をキープしています。

日本でも絶対に不可能ということは無いと思います。高齢化が進み、高齢者中心の政策を実施する流れがあるのは仕方ない面もありますが、是非日本の未来のことを考えて積極的に子育て支援を行なっていただきたいと思います。

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