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政令市中心駅:列車本数から利便性を比較する(中編・3) 名古屋・6都市比較

交通

政令市中心駅の列車本数を比較するシリーズ、中編最後の記事になります。
今記事では、名古屋市の中心駅と、中編で取り扱った
「札幌」「仙台」「広島」「北九州」「福岡」「名古屋」
の6都市の比較を行います。

まだ中編を見ていないという方は、以下から読んでいただくとより分かり易いかもしれません。
政令市中心駅:列車本数から利便性を比較する(中編・1)
政令市中心駅:列車本数から利便性を比較する(中編・2)

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名古屋市

名古屋市は、人口2,322,709人の政令市3位の大都市です。

今回取り扱う6都市の中では圧倒的な人口規模を誇り、日本の3大都市の一つです。
とはいえ、首都圏や関西圏と比べて鉄道規模が比較的小さいので、地方中枢都市との比較に含めています。

愛知県は、面積や可住地面積では福岡県とほぼ同じですが、平野部が分散している福岡県と違い、関東平野に次ぐ日本で2番目の広大な濃尾平野を有しており、名古屋市はこの平野のプライメートシティ(首位都市)です。
名古屋市に次ぐ規模の都市は約40万人の岐阜市であり、濃尾平野で圧倒的な中心性を有しています。

名古屋市の主要な鉄道交通機関は
JR・名古屋鉄道・地下鉄・近畿日本鉄道・名古屋臨海高速鉄道
の各路線です。

特に市内では、地下鉄網が6路線整備されており、中編で紹介してきた5都市と比べて大規模です。

また、名古屋を中心に愛知県内各方面に路線を持っている名古屋鉄道や、
関西圏に長大な路線網を持つ近畿日本鉄道の名古屋線など、
大手私鉄が2社中心部にターミナル駅を有しています。

特に名古屋鉄道は、愛知県内の各所に多数の路線を持っていおり、名古屋市・愛知県の重要な移動手段となっています。

本数は2022/04/05のもの。乗車人員は2020年度の数値をもとに作成。
名鉄各線の乗車人員は、乗降客数を1/2しています。
名鉄線は、全列車有料指定席のミュースカイのみを特急として換算しています。
臨海高速鉄道名古屋駅の乗車人員は2019年度のものです。
灰色表示のものは、他駅の同路線と被っているものを表します。

名古屋市は、名古屋駅前地域と地区の2つの都心地区を持ちます。
長らく栄地区が名古屋市最大の商業地でしたが、近年名古屋駅前の開発により、名古屋駅地区へのシフトが進んでいます。
しかし、栄地区も再開発計画が複数存在し、栄復活も囁かれているような現状です。

JRや名鉄本線・近鉄など主要な鉄道線のターミナルは名古屋地区に存在し、鉄道集積度は名古屋駅前地区が一歩抜きん出ていますが、名古屋市の最大の都心地区である栄駅にも地下鉄環状線名鉄瀬戸線など複数の路線が集積しています

名古屋駅前地区

JR名古屋駅・名古屋臨海高速鉄道 名古屋駅

JR名古屋駅は、世界最大の売り場面積を誇る巨大駅です。
JR東海の東海道新幹線の他、
中央本線・東海道本線・関西本線
の3つの幹線が通っています。

またJR線の他に、元々JR東海が保有していた線路を利用している鉄道事業者である「名古屋臨海高速鉄道」が乗り入れています。

東海道本線は、豊橋や岡崎・岐阜など都市圏内の主要都市を結ぶ重要路線ですが、名古屋都市圏の大部分で名鉄路線と競合関係にあります。
特急を含め、ラッシュ時12本・日中8〜9本とJRの中ではかなり運行頻度の高い路線です
6・8両編成の電車が運行されています。

中央本線は、県内北東部を通り長野へ向かう路線であり、名鉄と競合関係にないため、県内の利用者が多いです。ラッシュ時11本・日中9本であり、東海道本線に劣らない高頻度運転です。
全列車が8両編成で統一されており、利用者の多さが伺えます。

関西本線は、名古屋駅から関西(三重)方面へ向かう路線です。快速や特急も走っていますが、2〜5両編成が中心で、他の二路線と比べて地方線の様相です。
しかし、ラッシュ時や日中とも1時間に4〜5本の運行が確保されており、通勤利用にも十分な本数が確保されています。

JR名古屋駅にはJR路線だけでなく、元JR東海の貨物線であった路線で旅客線化した「名古屋臨海高速鉄道」も乗り入れています。
大赤字の路線でしたが、レゴランドの開業なども影響して、近年利用者が増えているようです。
全列車4両編成ですが、ラッシュ時6本・日中4本と本数が確保されており、利便性は問題なさそうです。

名古屋鉄道 名鉄名古屋駅

名鉄名古屋駅は、3面2線と大手私鉄ターミナルとしては最小規模の構造ですが、この2本のホームにさまざまな名鉄各路線に乗り入れる電車が停まります。

名鉄名古屋駅から発車する列車の多くは、犬山線を含め途中駅で各路線へと分岐して直通運転を行なっており、分岐するまでの駅間の運行本数は他の地方都市と比べて群を抜いています。
金山駅までの一駅区間はラッシュ時28本・日中16本という圧倒的な本数で運行しています。

近畿日本鉄道 近鉄名古屋駅

近鉄名古屋線ターミナル駅である近鉄名古屋駅は、大阪難波や三重県の津市・四日市駅方面へ列車が運行されています。
大阪までの距離が長いことから、有料の特急電車も多数運行されています。

数ある近鉄の駅の中で第4位の規模となっており、名鉄名古屋駅に次ぐ名古屋の私鉄主要駅です。
運行本数は有料特急込みで朝ラッシュ時16本・日中12本と、名古屋線の1路線ですが私鉄ターミナル駅水準を確保しています。

名古屋市営地下鉄 名古屋駅

名古屋市営地下鉄は、
東山線・名城線・名港線・鶴舞線・桜通線・上飯田線
の6路線が存在し、名古屋駅には
東山線桜通線が通っています。

その内東山線は名古屋の二大都心である名駅前と栄を結ぶ最も歴史ある主要な地下鉄路線であり、
ラッシュ時29本・日中12本と日本で最も運行本数の多い路線群の一つです。
利便性は言うまでもなく、全列車6両編成で運行されています。

桜通線は、東山線と一部並行して市南東部の住宅地に至る路線です。
名古屋市営地下鉄では比較的新しい路線で、東山線と比較して利用客は少ないです。
ラッシュ時14〜15本・日中6本と、日中の運行本数が少ないのが特徴と言えます。
しかし利便性という観点で見ると、全列車5両編成の10分間隔なので問題なく利用できるでしょう。

地下鉄伏見駅

伏見駅は、名駅と栄の丁度中間に位置する駅です。
東山線と鶴舞線の乗り換え駅であり、名古屋市営地下鉄では4位の乗車人員を誇ります。

舞鶴線は市内北部の郊外地域から、ベッドタウンの日進市まで伸びる路線で、名鉄の豊田線に乗り入れています。
ラッシュ時15本・日中8本で全列車6両編成と、地方政令市の中心部並みの本数が運行されています。

栄地区

地下鉄栄駅

地下鉄栄駅は、名古屋市第一の繁華街である栄地区の中心部に位置し、東山線と名城線(環状線)の乗り換え駅です。利用客は地下鉄駅で二番目に多く、名古屋駅に次ぐ規模です。

名城線は栄や大曽根などの主要地域と名古屋市東部の郊外地域を結ぶ路線であり、東山線に次ぐ利用者数があります。

名城線は両回りともラッシュ時19〜20本・日中12本とかなりの運行本数があります。

名鉄栄町駅

名鉄栄町駅は、栄を起点に瀬戸市までを結ぶ名古屋鉄道の路線です。
名鉄では唯一の孤立路線で、名鉄名古屋駅には行くことができません。

名古屋鉄道としては唯一栄地区に存在する路線であり、ラッシュ時13本・日中6本と地下鉄並みの本数を運行しています。
全列車4両編成であり、栄地区への通勤通学に利用しやすい路線になります。

副都心金山地区

副都心である金山駅は、複数の路線が乗り入れる巨大駅です。
乗り入れ路線のほとんどが上記で紹介しているため、地下鉄名港線のみ取り扱います。

地下鉄名港線は、名前の通り名古屋港から金山駅までの路線で、一部列車は名城線に直通しています。
名城線の支線という位置付けであり、

ラッシュ時11本・日中6本と運行本数は少なめです。

比較・総括

比較

これで中編で取り扱う予定であった6都市の紹介・解説が終わりました。
前編と比べて想像以上のボリュームになり、ここまで付き合っていただいた皆様には感謝しかありません。

さて、前編でも利用したサンバースト図を用いて、各都市の列車運行本数を比較します。

各都市のJR主要駅の列車本数を比較(2022/04/06時点の本数をもとに作成)

まずは、JR各駅の比較です。
関西本線以外高頻度の運行を行なっているJR名古屋駅が大差をつけています。
この駅は、東海道新幹線が他の都市の新幹線と比べて運行本数が多い特徴があります。

最下位は札幌駅で、新幹線が唯一通ってないことが要因でしょう。

各都市のJR主要駅の列車本数を比較(2022/04/06時点の本数をもとに作成)

新幹線を除いた結果がこちらです。
札幌駅・広島駅が入れ替わりましたが、それ以外に順位の変動はありません。

新幹線が無くなった分、名古屋駅・博多駅の差は縮まっており、札幌駅が広島駅を抜いています。
名古屋駅は、全路線が比較的本数が多く、3路線と路線数は最も少ないながらトップを保っています。
博多駅も路線数は3路線ですが、JR路線の中で6都市中最も高頻度で運行されている鹿児島本線を有しているのが強みです。
在来線の路線数が多い仙台駅は変わらず3位で、路線数の多さが際立ちます。

札幌市や広島市・北九州市は、昼夜間人口比率で他の3都市より低い傾向にあり、外部からの流入が多い名古屋・福岡・仙台で、広域輸送手段であるJRの本数の多さにつながっています。

各都市の主要駅:列車本数を比較(2022/04/06時点の本数をもとに作成)

上記が地下鉄や私鉄も含めた全体の本数比較表です。

名古屋が圧倒的な差をつけて首位に立っています。
理由は明確で、地下鉄路線の多さと大手私鉄存在です。
地下鉄東山線をはじめ、名城線、名鉄本線など運行本数20本を超える路線が複数存在し、一気に他都市と差をつけています。
車社会といわれつつ、この路線規模を維持する名古屋市はさすが三大都市の一角です。

次点の福岡にも大手私鉄である西日本鉄道が存在し、市内に2路線を持っていますが、
名古屋・札幌・仙台などと違い、鹿児島本線・地下鉄空港線以外の8路線全てが終着駅であるため、片側の本数のみで換算されており、本数が伸びませんでした。
福岡は、西鉄バスに大きなシェアがあることも理由の一つに挙げられます。

札幌は、地下鉄の路線網を含めると3位に浮上します。
札幌市は都市規模を見ても地下鉄網がかなり発達しており、雪国という特徴が影響していると考えられます。
さらに路面電車も有しており、路線数の少ない札幌市の交通をカバーしています。

仙台は、地下鉄路線が2路線と他都市より少ないことで本数を伸ばせず4番手です。
しかし、2路線とも路線長が長く、仙台市の郊外をカバーする重要な路線であり、開業したての東西線はまだ伸びしろがあります。

北九州は地下鉄を持っていないものの、北九州モノレール私鉄副都心のJR路線も加わり本数を伸ばしました。
しかし、モノレールと私鉄は本数が多いものの計測駅が始発駅のため少なく見積もられています。

最後に広島ですが、広島は他の都市とは事情が違い、日本一発達した路面電車網を有する都市です。
広電の本数を合わせると計測駅によっては両側で70本近く本数を稼ぐことができるため、鉄道駅だけを見て公共交通の利便性が低いと断言はできません。

総括

今回、地方中枢都市に名古屋を加えた6都市で比較しましたが、名古屋市とその他では明らかな差がありました。
地下鉄網のレベルが他都市とは全く異なります。

全路線片側で集計しても、名古屋206本、福岡95本、札幌68本となり、福岡と名古屋では倍以上の差があります。

各都市の主要駅:列車本数を比較(2022/04/06時点の本数をもとに作成・各駅本数が最も多い片側方面を集計)

他の5都市でも私鉄が存在する福岡や、地下鉄の規模が大きい札幌などと、仙台・広島・北九州でもかなり差が存在する結果となりました。

次は関西圏を取り扱いたいところですが、一旦違う話題の記事を挟みたいと思っています。
次回もよろしくお願いいたします。

中編・参考資料

仙台市交通局:地下鉄関連情報
https://www.kotsu.city.sendai.jp/subway/kanren.html
札幌市:札幌の都市交通データ
https://www.city.sapporo.jp/sogokotsu/kotsutaikei/index.html
JR東日本:各駅の乗車人員 2020年度
https://www.jreast.co.jp/passenger/2020_01.html
データで見るJR西日本
https://www.westjr.co.jp/company/info/issue/data/
令和2年版名古屋市統計年鑑 11.運輸・通信
https://www.city.nagoya.jp/shisei/category/67-5-9-24-0-0-0-0-0-0.html
名古屋市:毎年の統計
https://www.city.nagoya.jp/shisei/category/67-5-9-0-0-0-0-0-0-0.html
静岡県統計年鑑
https://toukei.pref.shizuoka.jp/chosa/22-020/index.html
浜松市統計書
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/gyousei/library/toukeisyo/004_r01-toukeisyo.html
アストラムライン各駅の1日平均ご利用者(令和2年度) http://www.astramline.co.jp/situation32.html
九州旅客鉄道:駅別乗車人員(2020年度) https://www.jrkyushu.co.jp/company/info/data/station.html
北九州市:長期時系列統計
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/soumu/file_0302.html
西日本鉄道:鉄道事業
https://www.nishitetsu.co.jp/group/enterprise_1.html
福岡市営地下鉄:地下鉄資料・データ https://subway.city.fukuoka.lg.jp/subway/about/material.php#business
広島電鉄COMPANY PROFILE 2021
https://www.hiroden.co.jp/company/outline/pdf/company-profile.pdf
名古屋鉄道:統合報告書2021 https://www.meitetsu.co.jp/ir/reference/integrated/__icsFiles/afieldfile/2021/12/02/2021_integratedreports.pdf

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