かつて、唐人町駅北側にあった「福岡市立こども病院」が2014年に「アイランドシティ」に移転しました。
約17,000㎡あるこども病院跡地は2022年現在までの8年間も開発されぬままでいました。
しかし、令和4年6月21日に福岡市の住宅都市局が「こども病院跡地活用の検討状況について」の公表を行い、事業者公募の概要が発表されるなど再開発の方向性が少しづつ明らかになってきました。
今回は、こども病院の再開発の可能性について福岡市の発表内容とともに考えていきます。
再開発予定地
開発地:中央区唐人町2丁目133番2 隣接道路:よかトピア通り・市道唐人町草ケ江線 面積:16,925.85㎡ 用途地域:第一種・第二種住居地域(容積率200%、建ぺい率60%) 地域地区:第二種20m高度地区、準防火地域
地下鉄空港線の唐人町駅まで徒歩4分程度の場所に立地している開発地周辺は、福浜団地や低層マンション・戸建住宅に囲まれており、住宅地に適した場所です。
近くには旧ホークスタウンの大規模商業施設「マークイズ福岡」が立地し、開発地西側には菰川が面しているため住環境や景観にも優れています。
公募条件
- 地域の魅力や市民の暮らしの質を高める機能
- 脱炭素社会実現に資する機能等
- 良好な市街地環境の形成
公募条件は大きく上記3つが指定されています。
地域の魅力や市民の暮らしの質を高める機能
元々こども病院が存在した場所ということもあり、医療福祉施設・子育て支援施設・教育施設などの福祉機能を一つ以上備えていなければなりません。
脱炭素社会実現に資する機能等
下記の要件が必要となり、最もハードルが高いものと考えられます。
・住宅を提案する場合は各住棟の一次エネルギー消費量を基準から20%以上削減 ・各棟の敷地内に太陽光発電設備の設置 ・蓄電池及び太陽光発電設備と組み合わせた地域や市民向けの防災対策の実施 ・一般開放用の電気自動車用急速充電設備の設置 ・住宅を提案する場合は別途各住棟の住宅用駐車場に電気自動車用充電設備の設置 ・緑化率10%以上(住宅を提案する場合は20%以上)の確保
当然、立地性質上公募事業者はマンション等の住宅をメインに計画することが考えられます。
住宅提案時には環境配慮を条件として加えられているため、次世代型の高機能マンションが提案される可能性が高いと考えています。
良好な市街地環境の形成
跡地の西側・東側に有効幅員2m以上の歩行空間の整備が必須になります。
こちらは建設時にセットバックしてその空間を整える必要がありますが、周辺地域の居住者にとっては嬉しい条件ですね。
その他要件
他にも、最大30mの高さ制限や住居数250戸の制限など周辺の住環境に配慮した制限がかけられており、敷地の広さから低〜中層マンションが複数棟+商業という形になりそうです。
どのような再開発が行われるか
現在、公募条件が発表された段階なので確定したことは何もありませんが、これらの条件からどのような再開発が行われるか予想してみます。
総合病院などの大規模医療施設
再開発地周辺には九州医療センターをはじめ、福岡山王病院・福岡記念病院など大規模医療施設が集積しています。そのため、新たに大規模医療施設が建設される可能性は低いかもしれませんが、2015年から2045年にかけて高齢化率が10%近く上昇すると予測されている福岡県の現状を考えると、医療福祉施設の需要増大に先駆けて大規模医療施設が建設される可能性もないとは言えません。
ホテル・店舗・住居機能を備えた複合施設
河川に面し、福岡ドームや地下鉄駅に近い同地はホテルを建てるにはかなり優れた立地です。
福岡ドームは様々なイベントを催しており、その度に周辺ホテルは満室になる状態です。また、地下鉄空港線に程近い立地は福岡タワーや天神・大濠公園など主要な観光地へのアクセスに優れており、観光拠点ともなり得る場所であるため、ホテルとして開発される可能性は意外と高いと考えています。
ホテルのみならず、マンションの住居販売や低層部に小規模商圏に向けた店舗の配置に加え、福祉施設を入れるなどで利益を最大化できるのではないでしょうか。
低層〜中層マンション
地下鉄空港線徒歩4分という立地上、マンションデベロッパーは喉から手が出るほど欲しい土地です。
低層部に福祉施設を入れつつ、マンションメインの開発を行う計画は当然考えられるでしょう。
福岡市内では大手デベロッパーの参入など、マンションの開発用地の獲得競争が活発になっており、今回の入札でどのような企業が落札するかによって開発の内容が大きく変わってくるでしょう。
最後に
本公募は令和5年 1月に優先交渉権者が決定されるため、建設開始時期は早くても来年となります。
個人的にはアフターコロナのインバウンド需要に備え、ホテル建設を行なって欲しいですがどうなるのか、続報が待たれます。
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