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【札仙広福】公示地価で好調な地方中枢都市の将来性は?将来の人口予測と高齢化率を比較してみた

将来人口推計

前回まで、特定の都道府県にフォーカスを当てて人口問題研究所が発表している将来推計人口を見ていきました。
【北海道内】2025年・2035年・2045年の市町村別将来推計人口を分析する
【宮城県内】2025年・2035年・2045年の市町村別将来推計人口を分析する
【広島県内】2025年・2035年・2045年の市町村別将来推計人口を分析する
【福岡県内】2025年・2035年・2045年の市町村別将来推計人口を分析する

「札幌市」「仙台市」「広島市」「福岡市・北九州市」の地方中枢都市を有する4道県の紹介が終わったので、ここで将来人口や高齢化率・若年人口率などの比較を行います。

これら4都市は、

  • 北海道・東北・中国・九州の各地方の拠点都市として大きな影響力を有する
  • 人口が大きく増加している。
  • ここ数年の公示地価の上昇率が3大都市圏を上回る上昇率で推移している。

などの特徴があり、少子高齢化が進む日本の都市ではポジティブな要因が多い都市です。

まずは札仙広福の現状を示します。

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札仙広福の現状

令和2年国勢調査 『人口等基本集計 (主な内容:男女・年齢・配偶関係,世帯の構成,住居の状態,母子・父子世帯,国籍など)』をもとに作成
大都市圏の範囲は 平成27年国勢調査 『大都市圏・都市圏』を基準として計算
福北大都市圏には山口の市町村を含むため、九州・山口として算出

4市は日本の広域地方の中枢都市としての役割を担っており、中心都市である4(+北九州)を中心とした大都市圏が形成されています。

市域人口 札幌>福岡>広島>仙台
都市圏人口 福岡>札幌>仙台>広島
地方人口 福岡>仙台>広島>札幌

となっており、市域人口と都市圏・地方ブロックでは規模に違いが見られます。

都市規模では札幌・広島が大きく、
都市圏・周辺人口では福岡・仙台の人口規模が大きい

2015年から2020年の人口推移で見ると、中心4市は軒並み人口が増加しており、福岡市の人口増加数・増加率は4市を圧倒して日本の全市町村でトップとなっています。
大都市圏では、札幌市が横ばい、仙台・広島では減少しており、福岡では人口増加しています。
福岡のみで見ると、福岡市を中心とする通勤圏での人口増加が北九州や筑豊地域での人口減少をカバーしている状態です。(参考記事)
地方ブロックを見ると、どの地域も軒並み人口が減少しており、特に東北地方の人口減少が多くなっています。

札幌・仙台・広島・福岡は軒並み人口増加中

福岡市は人口増加数・増加率が全国トップ

地方ブロックでは北海道・東北・中国・九州の各地方で人口減少中

2025年の人口予測

国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』より作成

2015年→2025年の各都道府県人口増減率を見ていきます。
札幌市・仙台市・広島市・福岡市の各市町村周辺は人口増加〜微減で推移しており、中心都市から遠ざかるほど人口減少率が高いことがわかります。

4市を中心とした大都市圏域の人口減少率も比較的緩やかであり、4市とも隣接した市町村で人口が増加している自治体が存在し、ベッドタウンでの人口増加が共通して確認できます。

札幌市・仙台市・広島市・福岡市の各市町村周辺は人口増加〜微減

4市とも共通して隣接したベッドタウンで人口増加している都市がある

2025年時点の予測データを見てみると、市域人口では「仙台市」のみが2025年時点で人口減少する予測であり、他の3市は増加傾向が続きます。大都市圏人口は福北大都市圏も人口減少に転じており、全ての都市圏で人口減少が起きています。
地方人口の増減率は「東北地方」で最も減少率が高く、札幌・福岡・広島の順で人口減少率が高いです。

現在活況な仙台市も、東北地方の少子高齢化や東京への転出の影響を受け、中枢4都市では最も早く人口減少期に突入します。市域人口・大都市圏人口・地方人口の全てにおいて仙台・東北で最も人口減少率が高いです。

2025年時点で仙台市は人口減少に転じている

大都市圏・地方人口でも仙台都市圏・東北地方の人口減少率が最も高い

2035年の人口予測

国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』より作成

2035年には4道県ともに広い範囲で人口が減少していますが、福岡県・宮城県の一部地域で人口が増加している自治体もかろうじて存在しています。宮城県富谷町・福岡県粕屋町は両町とも人口増加が継続しており、ベッドタウンの発展が続いています。

札幌市・広島市・福岡市は中央区・中区など中心部の人口が増加しており都心部に人が集まる傾向が見られますが、仙台市・北九州市では全域で人口減少しています。

人口減少率が3割を超える自治体が各道県郊外部で見られるようになり、団塊世代が90代前半となる時期のため老老介護など高齢化問題が深刻となることが予想されます。

仙台市・北九州市は中心部を含め市域全域で人口減少する

郊外で人口減少率が3割を超える自治体が多くなる

福岡市は人口167.7万人と増加が継続しており、人口のピークを迎えます。
広島・札幌が約2.5%人口減少している中、仙台市は5.2%と減少率が飛び抜けており、地方中枢都市の中で仙台市の衰退が際立ちます。

大都市圏の人口増減率は2025年の時点で
広島>札幌>福岡
だったものが、
福岡>札幌>広島
となっており、広島都市圏の人口減少が加速していると見て取れます。

地方別の人口増減率では、西高東低の傾向が続いており、北海道・東北地方の人口減少が深刻です。

福岡市は人口増が継続しピークを迎える

仙台市の人口減少率が10年で5%を超える

地方人口の増減率は西高東低

2045年の人口予測

国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』より作成

この時期になるとほぼ全ての自治体で人口が減少します。
この4道県では福岡県粕屋町と福岡市西区の2地区で人口が増加しています。福岡県粕屋町では2015年比の人口増加率が2割を超え、全国屈指の人口増加率を誇ります。

4道県とも中心都市以外のほとんどの地域で減少率が3割を超え、半減する自治体も少なくありません。
福岡県・広島県の両県は基本的に元々人口が希薄な市町村で激しい人口減少が見られる傾向にありますが、宮城県では、「石巻市」「登米市」など比較的規模の大きい県内の主要都市で3割を超える人口減少が存在するのが特徴的です。

また、大都市圏内でも人口減少が進んでおり、
札幌都市圏では「石狩市」「札幌市南区」「小樽市」「北広島市」
仙台都市圏では「石巻市」「塩竈市」
広島都市圏では「呉市」「江田島市」
など、町村ではない自治体でも減少率が3割を超えています。
比較的人口減少がマシな福岡都市圏でも「宇美町」は減少率が2割を超え、首都圏からの移住先として人気の「糸島市」も約16%人口減少しており、高齢化も進行しています。

4道県で人口が増加するのは「粕屋町」「福岡市西区」のみ

人口4割減以上の自治体が4道県で多数見られる

大都市圏内の市町村でも3割を超える人口減少が発生

2045年には4地域とも市域人口・大都市圏人口・地方人口ともに減少しており、唯一2035年時点で人口増加が予測されていた福岡市域人口も減少期に入っています。

市域人口が特に減少するのは変わらず「仙台市」で、1割近い減少率となっており100万人を割り込んでいます。大都市圏の人口も全都市で5%以上の減少が見られ、元々人口規模が大きい福北大都市圏では30万人以上人口が減少します。

地方人口の減少数は北海道地方・中国地方で約50万人、東北地方・九州山口地方で約100万人となっていますが、北海道・東北地方の人口減少率が深刻です。

福岡市が人口減少期に突入

仙台市が100万人を割り込む

北海道・東北地方は10年で1割以上の人口減

各地域の高齢化率について

ここまで見てきた中で、北海道・東北地方と中国・九州地方では人口減少率の予測に差があることがわかっています。
人口が減少する要因として、
高齢者の死亡と出生数の差から発生する「自然減少
地方から首都圏などの他地域に人口が流出する「社会減少

の2種類があります。
今後訪れる日本の急激な人口減少の原因は主に団塊世代・団塊ジュニア世代の高齢化による自然減と出生率が少なく出生数が減少していることによる「自然減少」が大きな原因となっています。

国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』より作成
2015年は実数値 以降は推計値
国立社会保障・人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)』より作成
2015年は実数値 以降は推計値

上の図は、各都道府県の高齢化率と若年層率です。

宮城・広島・岡山・福岡・熊本など大都市を有する地域は比較的高齢化率は低くなっていますが、どの地域も人口規模の少ない都道府県ほど高齢化が深刻です。しかし、全体的に見て東北・北海道地方の高齢化率は平均より高いことがわかります。

若年層率を見るとその逆の傾向が見られます。中国・九州地方の若年層率は比較的高く予測の減少率も少ないですが、東北・北海道地方は若年層率が低く人口減少の予測も厳しいです。

厚生労働省『令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況』より作成

次に各県の合計特殊出生率を見ると、明らかに地方によって差があることがわかります。
大阪や東京など、都会の都道府県ほど出生率が低くなる傾向は全国的にあり、北海道・宮城・福岡・広島は地方ブロックで見ると最も出生率が低いです。
しかし福岡県や広島県は東北・北海道の全道県よりも出生率が高く、中国・九州地方と東北・北海道地方では0.3近い差があります。2020年の全国の平均値が1.33であることを考えると、中国・九州地方の出生率がいかに高いかがわかります。

2020年の時点でこれだけの差があるため、将来人口の増減率にも大きな差を及ぼしたと考えられます。
そもそも人口置換水準である2.07には全く達していないため、日本全体で言えることですが、
「子育て支援」「保育士・教師等の待遇改善」「教育費の支援」「2・3人目の出生に対する助成金」など、すぐに実行できる政策は多くあります。
高齢者の割合が有権者に多くなり、ますます子育て世代・若者世代の声が政治に反映されにくくなっています。若者ほど政治に興味を持ち、日本の将来を考えなければ、日本は必ず衰退してしまいます。

この少子高齢化の現状を打破するために、皆さん一人一人に問題意識を持っていただきたいと思っています。

東北・北海道地方は高齢化率が高く、高齢化の進行も急激

東北・北海道地方は若年層人口率が低く、将来も減少が激しい

九州・中国地方と東北・北海道地方の合計特殊出生率は0.3もの差がある

有権者にも高齢者の割合が増え、若者が問題意識を持ち将来を考えることが重要

各都道府県について詳しい数値は下記の記事をご参照ください。
【北海道内】2025年・2035年・2045年の市町村別将来推計人口を分析する
【宮城県内】2025年・2035年・2045年の市町村別将来推計人口を分析する
【広島県内】2025年・2035年・2045年の市町村別将来推計人口を分析する
【福岡県内】2025年・2035年・2045年の市町村別将来推計人口を分析する

コメント

  1. ななし より:

    ここ数年の公示地価の上昇率が3大都市圏を上回る上昇率で推移している

    のどこがポジティブな要素なのですか?
    家を買う消費者にとってはクッソネガティブな要素なんですけど

    地価上昇をいいことのように言わないでください、まるで家を買うのに無駄金払うことがいいことのように聞こえます

    • 公示地価に限らず、地価上昇はもちろんいい面も悪い面もありますよね。
      家を購入する際は土地代に影響しますし、固定資産税にも影響します。福岡市に住んでいると、マンション価格も賃貸価格もどんどん上昇しているのを私も感じます。

      他方で、すでに物件を所有している方にとっては売値の上昇にも影響を与えるので、特に地価の上がっている地域で20年、30年前に購入した新築マンションの売値が購入価格と遜色ない額となっている場所もあります。
      また、評価額が上昇することで、固定資産税や都市計画税の増収にも繋がり、これらの税金が社会福祉や子育て支援に利用されて市民に還元されます。
      福岡市では、水害被害対策や地下鉄整備、文化施設整備などで、他都市と比較しても高い市債残高がありましたが、ピークのH16年一人当たり市債残高191万円から令和5年には半減の約94万円となっており、地価上昇からの増収分も市債削減につながる一因となっており、将来世代に過度な負担を残さないようになっているのです。

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