今回は、都市間鉄道になれなかった福岡市の小規模路線「西鉄貝塚線」を紹介します。
鉄道は都市間を移動するのに利用される都市間交通と、都市内や通勤圏内を移動するのに利用される都市内交通に大別されます。
日本国内にはJRの鉄道網が広がっており全国の都市と繋がっていますが、中都市〜大都市では私鉄や地下鉄などで都市内交通用の路線も多く存在します。
大手私鉄の主要路線は大都市間を結ぶ路線が多く、近鉄大阪線・名古屋線や名鉄岐阜線、東武伊勢崎線、西鉄天神大牟田線など各地の大都市圏で50kmを超える都市間路線があり、JRと競合関係にあります。
地方私鉄では静岡鉄道や遠州鉄道、高松琴平電気鉄道など中心市から隣接自治体を結ぶ路線として都市内交通を担う路線も多いです。
福岡市にもそんな私鉄の都市内交通路線が存在します。
それが「西鉄貝塚線」です。

西鉄貝塚線の概要
路線長(営業キロ) | 11.0km |
駅数 | 10駅 |
軌間 | 1,067mm |
複線区間 | なし |
電化区間 | 全線電化 |
西鉄の他3路線と違い、貝塚線は西鉄天神大牟田線とは独立しています。
軌間も狭軸を採用しているため西鉄天神大牟田線の標準軸とは異なりますが、貝塚駅で接続している福岡市営地下鉄箱崎線の軌間と同じなので、西鉄・地下鉄での乗り入れが可能です。
全線単線ですが、複線化用地は西鉄貝塚線の沿線各地に見られ、もし地下鉄箱崎線と乗り入れすることになれば合わせて複線化工事を行うものと思われます。(採算性が合わず見送られましたが、、、)
輸送実績
駅名 | 輸送実績(2019年 乗降人員) |
貝塚駅 | 16,924人 |
名島駅 | 3,294人 |
西鉄千早駅 | 6,296人 |
香椎宮前駅 | 2,436人 |
西鉄香椎駅 | 4,108人 |
香椎花園前駅 | 3,340人 |
唐の原駅 | 1,134人 |
和白駅 | 2,270人 |
三苫駅 | 3,574人 |
西鉄新宮駅 | 1,428人 |
コロナの影響が少ない2019年は殆どの駅で乗降客数の増加が見られました。
西鉄新宮-津屋崎間の廃止に伴い貝塚線の各駅で利用者数が減少していましたが、ここ10年ほどは乗降客数が増加傾向にあります。特に西鉄千早〜西鉄香椎は近年の再開発に伴い周辺人口が大きく増加しており、西鉄千早駅では過去10年で乗降客数が倍増しています。
西鉄貝塚線の歴史


西鉄貝塚線は現在全長11kmの短路線ですが、2007年以前は西鉄宮地嶽線として福津市まで約21kmの路線でした。さらに、路面電車が走っていた時代には貝塚〜千鳥橋間の3.3kmにも路線が存在しました。
宮地嶽線西鉄新宮-津屋崎間が廃止される2007年以前は利用者の減少に歯止めがかからず、廃止に舵を切ったと思われますが、その後の福岡都市圏の人口増加や鉄道回帰によって皮肉にも2007年以降利用者は継続して伸びています。
西鉄貝塚線はかつて筑豊方面に延伸し、現在の筑豊電気鉄道を経て北九州に向かう路線になる可能性のある路線でした。
筑豊電気鉄道は元々黒崎〜博多を結ぶ路線の建設免許を持って着工されました。しかし、筑豊地区の人口減少や、山がちな筑豊地区を抜けるための工事に予算がかかりすぎるため、現在の黒崎〜直方間で工事が終了してしまいます。
後にJR九州が黒崎〜博多を結ぶ筑豊本線・篠栗線(福北ゆたか線)を開業させ、同社唯一の在来線黒字路線として活躍していますが、沿線開発が得意で国鉄と比較して柔軟な運営が可能な大手私鉄の路線ができていたなら、筑豊地区はさらに発展していたのではないかと思いを馳せます。
西鉄貝塚線の今

西鉄貝塚線は福岡市営地下鉄箱崎線が開業するまで利用者が減少傾向にありました。
箱崎線開業後は利用者が一気に増加し、数年後に過去最高値を記録しています。しかし、バブル崩壊後は減少傾向が加速し、津屋崎ー西鉄新宮間を廃線した2007年には近年では最も利用者が低くなりました。
年度 | 利用者数 | 備考 |
1975年 | 1129.8万人 | |
1985年 | 761.3万人 | 地下鉄箱崎線開業前年 |
1992年 | 1219.4万人 | 過去最高利用者数 |
2007年 | 604.0万人 | 津屋崎ー西鉄新宮間廃線 |
2018年 | 800.0万人 | |
2021年 | 約483万人 | コロナ禍の影響大 |
しかし、一部区間廃線後は一貫して利用者が増加しており、コロナ前の2019年には混雑率158%という関東圏を除く日本の鉄道路線で最高値を記録しています。
利用者の割に小型車両が2両編成しか運行されてないため、混雑率が高くなっています。以前は3両編成の車両も運行されていましたが、現在は路線に所属する列車は2両編成の600形が8編成しかなく両数を増やしにくい状態です。
コロナ禍で一時的に利用者が大きく減ったものの、沿線人口は特に福岡市内を中心に増加傾向にあり、単線路線としては珍しく本数も多く一部高架化されている路線のため、今後も多くの人の足として活躍していくと考えられます。
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