前回は、都市の中枢性を中心に見ていきました。7大都市圏・7大都市というのは、現在の日本では広域に影響を及ぼす都市であり、日本の半数以上がこの7大都市圏に居住しています。
しかし、日本には都道府県というよりミクロな基準で地方自治が行われており、各都道府県の県庁所在地としてその都道府県内で大きな影響力のある都市も数多く存在します。
また、ある程度の規模を持つ都市として、政令で指定された、県庁に近い自治機能を持つ「政令指定都市」も20市存在します。
これらの都市も都会とする意見も数多くあります。
今回はこのような基準を見ていきましょう。
5.政令指定都市が都会
この意見は、かなりの頻度で見かけます。
政令指定都市は、都市の人口規模を基準で指定されているため、都市人口重視の意見といえるでしょう。
そもそも政令指定都市とは何か。
このようなブログを見ていただいている皆様はご存じの方が多いと思いますが、軽く解説します。
政令指定都市とは、前述のとおり一定程度以上の人口規模を持つ大都市に、道府県庁の一部の機能を移すことを定めた制度のことで、現在20政令市が定められています。
この政令市は一度に20市定められたわけではなく、都市の成長や合併などで基準人口を超えた都市を順次定め、増えていきました。
初めて定められた政令市は、旧制度「五大都市行政監督ニ関スル法律」を根拠とし、
- 横浜市
- 大阪市
- 名古屋市
- 神戸市
- 京都市
が定められました。
政令市となる資格がある都市は、「人口50万人以上の都市」とされていますが、実際には当時の神戸市を基準とした「人口約100万人以上の都市」となりました。
しばらくはこの5都市のみが政令市である期間が続きましたが、
1963年 北九州市 102.3万人
が政令市に移行しました。北九州市は官営八幡製鉄所を有し、戦前から高度成長期にかけて、日本の4大工業地帯として発展した大都市圏でした。10~30万人規模の都市の集合体であったこの地域の都市群が5市対等合併を行い、人口100万人規模の北九州市が誕生しました。
この後、
札幌・福岡・川崎・広島・仙台・千葉・さいたまが政令市として指定されました。
ここまでが先行政令市として、「人口100万人以上もしくは、将来的に100万人に到達する見込みの都市」の条件で指定されています。
平成に入り、市町村の大合併が行われている中、「人口70万人以上の都市」という新たな政令市昇格の条件を満たした
静岡・堺・新潟・岡山・相模原・熊本
が新たな基準の中、合併で増やした人口により指定されていきました。
あくまでも政令市は人口が主な基準となるので、この20市を都会としています。
この中での序列は、密度や経済、都市圏など他の基準で十人十色でしょう。
6.商業・経済が発展している都市(1)
商業が発展している=都会
というのはイメージに合う人も多いのではないでしょうか。
繁華街が発展しているから都会という基準もよく見かけます。
商業統計には、「小売業」と「卸売業」があり、その両面から考えていきます。
まずは小売業の統計を見ていきます。
平成26年度 立地環境特性別統計編(小売業)【経済産業省】によれば、
商業集積地区(繁華街・商店街など)の年間商品売上額が1500億円以上ある市町村は以下の通りです。
- 北海道
札幌市 8285億 中央区 3189億 - 宮城
仙台市 6149億 青葉区 3148億 泉区 1552億 - 岩手
盛岡市 1546億 - 福島
福島市 2046億
郡山市 2023億
いわき市 1618億 - 栃木
宇都宮市 2164億 - 群馬
前橋市 2038億 - 埼玉
さいたま市 3852億 - 千葉
千葉市 3937億 中央区 2379億 - 東京(特別区は5000億以上を表示)
特別区計 73471億
千代田区 5210億
中央区 8464億 銀座地域 5379億
新宿区 10824億
渋谷区 9570億
豊島区 6620億
八王子市 3562億
立川市 1603億
武蔵野市 2016億
町田市 2556億 - 神奈川
横浜市 21687億 西区 5908億(横浜駅西口 2139億)
中区 2399億 青葉区 1617億 都築区 1772億
川崎市 4973億
相模原市 2877億
藤沢市 2499億 - 新潟
新潟市 2793億 - 石川
金沢市 1703億 - 長野
長野市 2260億
松本市 1809億 - 静岡
静岡市 1749億
浜松市 3423億 中区 1712億 - 愛知
名古屋市 11640億 中村区 2117億
中区 4439億(南大津通り商店街 2702億) - 京都
京都市 6190億 下京区 2681億 - 大阪
大阪市 16287億 北区 4706億 中央区 4824億
堺市 1543億 - 兵庫
神戸市 7105億 中央区 3472億
姫路市 2043億
西宮市 1676億 - 広島
広島市 4532億 中区 1732億 - 愛媛
松山市 2243億 - 福岡
北九州市 3466億 小倉北区 1629億
福岡市 8458億 博多区 1577億 中央区 4367億 - 長崎
長崎市 1804億
佐世保市 2526億 - 熊本
熊本市 2559億 中央区 1674億 - 大分
大分市 1829億
以上です。
東京特別区を除くと1500億円以上ある都市は39都市です。
これを3000億以上に絞ると
札幌・仙台・さいたま・千葉・八王子・横浜・川崎・浜松・名古屋
京都・大阪・神戸・広島・北九州・福岡
に絞られます。
この小売業の売上規模は、基本的に都市人口の影響を大きく受け、さらに都市圏人口・昼夜間人口比率など、都市の中枢性を測る指標や高齢化率の影響も受けます。
また、この統計では住宅地区や工業地区の商業売上は入っていないため、静岡や広島など、同規模の都市と比較して売上高が少ない都市は、商業地区以外の地区の売上高が高いと考えられます。
この統計を見ることで、都市内に存在する商業地の規模をある程度把握することができました。
次に、卸売業の商品売上高を見ていこうと思いますが、長くなったので次回にさせてください(/_;)
追記:2022/03/09
立地環境特性別統計編(小売業)【経済産業省】
こちらの統計では、通信販売事業者の小売業売上が本店所在地に入ることがわかりました。
佐世保市の小売業売上が都市規模と比較しても高いのは、佐世保市にジャパネットホールディングスの本店が所在し、この会社の売上が計上されているためと考えられます。
ジャパネットホールディングスを除いた佐世保市の商品売上額は約1100億円と推定します。
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